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概要
2021年春、日高高校 中津分校(以下、中津分校)の高校生が、紀州備長炭で焙煎したコーヒー豆販売を目指し、準備を進めている。SNS発信をしながら、ECサイト販売もスタートさせたいので、ぜひエンジニアの目線でアドバイス頂けませんか?と、担任の網代先生から声をかけていただいた。
(紀州新聞にも、当日の様子を掲載していただきました。)
そこで、2021年5月、中津分校を訪れて、授業に参加させていただいたので、準備と当日の様子をまとめた。これからECサイトをはじめる高校生の参考になれば嬉しい。
準備編(高校生に伝えたいことを考える)
何を伝えればいいのだろう?たくさん伝えたい事はあるものの、限られた時間で何を伝えるべきか。そこで、事前に質問をいただくようにお願いしておいた。
高校生から頂いていた質問は、次のようなものだった。
- 通販サイトの閲覧数を増やすにはどうすればいいですか。
- 見やすいサイトの条件ってありますか?
- どんな感じの言葉を使えばお客さんの気を引くことができますか?
- どんな写真や動画がアクセス数が増えますか?
どれも『正解』を求めているように思えた。たしかにコーヒー豆の販売に絞れば、成功事例を調べて、「こんな写真が効果的だ」「こんな言葉が刺さりそう」と仮説は立てて、伝えることはできるだろう。
より良い回答をできるように、SNS・ECサイトに関連する本も数冊購入して、準備を進めた。
でも、先ほどの質問に答えてもテクニック論的になるし、それよりも大切なマインドを伝えることが必要だと思った。
ECサイトを始める高校生に伝えたいことは3つだった。
- あらゆる事を試そう
- まずは1個。売って感動を味おう
- 自分で調べて考えよう
熱量を伝えることこそが必要だと思い、リモートではなく、直接来訪して、言葉で伝えることにした。
あらゆる事を試そう
熱量を伝えるためには、やはり自分で経験したことを語ることにした。
紹介する経験談は、地域おこし協力隊時代の「寒川(そうがわ)ワンダフルナイト」の事例だ。寒川ワンダフルナイトは、日高川町寒川地区で行われる2016年にホタル祭りを復活したお祭りだ。6年ぶりのお祭り開催なので、たくさんの広報活動を行ってきた。
「寒川ワンダフルナイト」では、身近な人に来て欲しいという想いから「チラシ」に注力した。
手配りを中心にしながら、お店などに置いてもらった。お店に置いてもらう事よりも大切なことがあった。それは「置いてもらうお願いをする」事で、お祭りの説明となり、話のネタとなり、次の口コミに繋がっていったのだ。
チラシには、寒川ワンダフルナイトのホームページとFacebookの情報も載っている。
Facebookでは、お祭りの裏側を知ってもらうことに注力した。ホタル復活への活動を知ってもらい、ホタルが少ないながらも、ホタルが毎年少しずつでも増えていく様子を、みんなで見守ることができれば、楽しいと考えた。合わせて、竹キャンドル準備の様子も知ってもらうことで、苦労も楽しさも共感してもらえるように発信を続けた。
また、ホームページではイベント当日の内容がわかるように情報をまとめた。
広報活動をまとめると、次のとおりだ。
- チラシ
- Facebookページ
- ホームページ(ウェブサイト)
- 広報日高川への掲載
- 防災無線
- テレビ
- ラジオ
- 新聞
- イベント掲載されるウェブサイトへの告知
思いつく限りの広報活動をすべて行ってきた。あらゆる事を試したのだ。当然初めてのことだから、本やネットでも調べたし、それでもわからないこと(プレスリリースの方法など)は人に聞いた。
今では、Facebookページのいいね数も500程度あり、イベント開催ごとのHPアクセス数も順調に増えてきた。1年目チラシ配りを頑張った成果もあり、2年目からはFacebookとホームページ中心の広報活動を行うことで省力化もできた。
Facebookページ いいね数500と言えば、それほど多くないと思われるかもしれない。でもお祭りのキャパシティは、駐車場200台で、限りがあるのだ。せいぜい多くても1000人程度のお祭りということである。
だからこそ、私達の広報活動の目標は、身近な人・地域の人を中心にして、ホタル復活を一緒に喜び合いながら竹キャンドルの灯りを楽しむ、ということだった。もしもっと多くの人が来てしまったらキャパオーバーになっていただろう。だからこそ500といういいね数は、ちょうど良い数だと思う。
この事例を伝えた上で、次に実際のECサイトの話をしていった。
ECサイトを作る話
・通販サイトの閲覧数を増やすにはどうすればいいですか。
これは、事前に頂いてた質問だ。
逆に、高校生に質問してみた。「通販サイトの閲覧数を増やすにはどうすればいいと思う?」
- 見栄えの良い写真を撮る
- Instagram・Youtubeで発信する
- ポスターを作り、貼ってもらう
- 良いデザインのサイトを作る
たくさんの答えが返ってきた。もしかしたら、高校生たちは正解を出してほしかったのかもしれないが、私は「全部やってみればいいんじゃない?」と答えた。
もちろん時間的な制約があるなら、候補の中から効果が高そうなものからやればいい。
でも時間があるのなら、自分で思い付いたものをやってみる、ことが大切だ。「先生から言われたから」「近藤さんが言ってたから」で始めてしまうと、成功しても失敗しても、自分事にならないのだ。
担任の網代先生のブログでも、高校生自身に自分事にしてもらたいと奮闘されている様子が伺える。
いかに自分事にするか
中津珈琲の焙煎、販売の取組が生徒ペースですがゆっくりと進んでいます。生徒が自分事になれば一気に進んでいくんだろうなと思って見ています。ついつい言ってしまったり、やってしまったりしそうになるんですが、そこをグッと我慢しています。
だから自分で考えたことを、自分で実行してみる事が大切だ。駄目ならば改善すればいいし、実行したことで次の課題が見えてくるだろう。
“試す”大切さを教えてくれる1冊(仕事は楽しいかね)
ぜひたくさん試す前に読んでほしい本を一冊ご紹介しておこう。「仕事は楽しいかね」という本だ。
(漫画の方が良い方は、「仕事は楽しいかね」漫画版もあります。)
ストーリー調になっていて読みやすいし、分かりやすい実例を交えながら、「試す」ことの大切さを教えてくれる本だ。
特に、計画を立ててから実行しようと思っているなら、ぜひこの本を読んで欲しい。”計画”ではなく”実行”のほうがよほど大切なことだと気づけると思う。
あと、(2021年5月現在)Amazon Kindle読み放題(月額980円 / 無料体験あり)でも読むことができる。無料体験もあるし、本屋さんの立ち読みでもいいので、ぜひ読んでみて欲しい。
まずは1個売って、感動を味わう
高校生たちに、販売の1歩を踏み出してもらうために必要なのは「まずは1個売ってみる」ことだと気づいた。なぜなら、はじめての1個を売ることは、とてつもなく嬉しい感動があるからだ。
自分自身の経験で言えば、ホームページ修繕で初めてお金を頂いた時、とても大きな感動があった。
この感動は言葉ではなかなか伝えにくいけれど、自分を信頼してくれて、(直接は知らない人なのに)サービスを依頼してくれて、その対価としてお金を払っていただけた。その時、1週間ほど時間を要したが、頂いた額は8万円で、とてつもなく大きなお金に思えた。サラリーマン時代では決して味わえない感覚だったと思う。
このエピソードを熱を持って伝えたつもりだが、どれだけ伝わったのだろう。
まずは1個売って、商品を売る喜びを感じることができれば、ECサイト・SNS発信ももっと自分事になると思う。この1個売れた時の喜び・熱量が生徒たちに伝わっていると嬉しいなぁと思う。
自分で調べて考えよう
・見やすいサイトってどんなサイトですか?
ある高校生からの質問だ。ちなみに、ECサイトは、BASEでの運営を予定しているとのことだ。
ざっくりの質問で、ピンポイントに答えることが難しいなと思った。そこで、事前に調べておいたBASEで運営されているコーヒーショップの事例を2つほど紹介しようと思った。
その前に、逆に聞いてみた。
「コーヒーのECサイトを自分で調べたりした?」
その高校生は、調べていないということだった。
そこで、事例を紹介する前に、自分で調べて考えることの大切さを伝えようと思った。
今の時代は、みんなも1人1台パソコンを持っていて、本・ネット記事・成功しているサイトだって自由に調べられる。
Amazonで本を探してみて、「試し読み」もできるし、(購入する前に)レビューで読んだ人の感想を参考にすることもできる。Googleで検索すれば、大体の答えは返ってくる。コーヒー豆(販売したい商品)を売っている事例もすぐに調べることができる。
時間があれば、実際に「BASE」「コーヒー」で調べてもらうところだが、時間の都合上、すぐに2つのサイトを紹介した。
BASEショップで、プロのデザイナーが作ったサイトを買うことができる。だからすぐにデザインの整ったサイトも作れることを伝えた。
まとめ
モノを売ることは、正解のある授業と違い、あらゆる事を試すことが大切になってくる。もちろん教えてもらうことで、ある程度の答えが見つかるかもしれない。
でも一番大切なことは、”自分で調べて考えて”、”自分で試すこと”だ。そのための一歩として、まずはどんな方法でも良いので、1つを売ってみて、感動を味ってほしい。勉強では味わえない、ビジネスの楽しさを感じられるはずだ。
中津分校の生徒たちが、まずは1つを売ることで感動を感じ取って、次々に新しいことを試してくれると良いなあと思う。